「主人のやっている接骨院の経営が厳しくなって、
何か始めないと生活ができないと思って」。
5年前34歳のとき、
居宅介護支援事業所を立ち上げた直接のきっかけがこれ。
とはいうものの、脊髄損傷の母親の介護を長年続けてきたから、
介護に携わりたい気持ちは強かったし、
現場の状況はわかっていた。
デイサービスセンターをその翌年に建設。
資金は銀行ローン。
それでも足りない400万円は、
地主さんに直接頼み込んで借りた。
「実は地域の要望も大きかったのです」。
高齢化が特に進む田舎では、
若い女性への期待があったのだろう。
ひたむきな姿勢がサポーターをつくったともいえよう。
訪問介護も始めて、今、経営は黒字化。
介護タクシー事業をスタートさせる準備もしている。
「これで儲けるつもりはないんです。
距離制にするととんでもなく高くなるから、
時間制にするつもり。
ここでは、遠くの病院に通いたい方が多いので」
スタッフは18人。ほとんどが正規職員である。
働きやすい環境を心掛けているせいか、離職率は低いという。
競合はないの?と聞けば、「ありますけど」。
行政の担当者や同業者、各種団体、医療機関との
コミュニケーションを欠かさず、
丁寧に付き合っているのが強みらしい。
小柄でかわいらしい姿は経営者のイメージには遠いが、
まぎれもなく事業家である。
接骨院も危機は脱した。
「この仕事が本当に好き」という彼女、次は。
「特別養護老人ホームをしたいけれど、お金がない。
誰か作ってくれないでしょうか。運営はうちがしますから」。
私に2億円あれば提供したいが、
あいにく持ち合わせていないからねえ。
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介護保険制度ができて10年。
新規参入者も多く、関連施設は増えた。
それでもサービスの質を選べるほど充足はしていない。
ただ、若い人の志を具体化できる素地は、
確かにできたのだ。
未来に希望はある。
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このコラムは、
「Wife」に毎号、河上多恵子が執筆している「トナリの暮らし」を
そのまま載せています。
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