絵画にせよ創作人形にせよ、個展が開かれている会場には、
たいてい立派な花鉢が置かれている。
お祝いに届けられたのである。
大勢のお弟子さんを抱えている先生なら、
その数も一つや二つではない。
テーブルには、小ぶりのフラワーアレンジメントも載せられていたりする。
2、3年前何気なく入った銀座の画廊では、
百を超える鉢が床に並んでいた
(目についたものを数えるクセがあるため、実際に数えた)。
あれほどの花鉢群を見たのは最初で最後。
どれにも社名の入ったカードが付けられていた。
こうしたお祝い用は胡蝶蘭が定番である。
華麗で見栄えが良いし、しかも長持ちする。
花茎1本が1万円などと言われ、
高価であることが誰にもわかるところが、またいいのだろう。
鉢の数で、主催者の人気というか勢力というか、
要するに現状の位置どりが推し量れるというものだ。
それに受付前や隅っこ、あちこちに飾られていれば、
確かに会場が華やぐ。
■ □ ■
ある先生から聞いた話。
昨今、以前は胡蝶蘭をくれた取引先が、花篭をよこすというのだ。
色合いは黄色や赤が取り混ぜられて派手なのだが、
値段は胡蝶蘭よりぐっと安い。
「オアシス(吸水スポンジ)に水をやらなくちゃいけなくて、
それも面倒なんですよね」
経費節減のご時世。生花はやめて、お菓子類にする所もあるそうだ。
「もらっておいてナンなんですが、やっぱりお花がいいですよ。
場の雰囲気が違ってくるもの」
その先生に教わっている生徒さんの話。
1人1000円ずつ集めて、3万円の胡蝶蘭を贈ることにした。
そんな品が店頭にそろっているわけではないから、
値段と色と到着時刻を指定した。
花屋さんから「この花を届けました」と
画像付きお知らせメールも来るのだが、
会場で実物を確かめた。
大輪の白い花がびっしりと咲いている3本立ち。
部屋の中心の目立つ所に置かれていたという。
「先生にお礼を言われてほっとした。
ほかのクラスからのお花は、開場に間に合わなかったらしいの」
無敵の胡蝶蘭にまつわる一つのお話。
* ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ *
このコラムは、
「Wife」に毎号、河上多恵子が執筆している「トナリの暮らし」を
そのまま載せています。
トップページに戻る